雑感 アーカイブ

2025-10-10

私の愛する一点展 23回 

2025.6.21〜8.24 
東御市梅野記念絵画館

















高須賀優「若いサーカス団員」

画 材:アクリルガッシュ/鉄板(トタン)

サイズ:52.5×38.5センチ

制作年:2025年

高須賀優の一連のサーカスに題材を取った過去作を拝見し、そこに塗布された飛び散るが如き絵の具の鮮やかさと画家の荒ぶる精神の有りように眼を見張ったことがある。この最近作「若いサーカス団員」を観ると、打って変わり演技を終えた道化師がホッとひと休息し、物思いに浸る様が絶妙に描かれている。沈静した表情に哀感が漂うようだ。人生って、波瀾万丈、喜びも哀しみもこの道化師そのものではないかと共感を覚えた。ルオーやピカソ、三岸好太郎等、洋の東西を問わず、サーカスや道化師を描いた名作は数々あれど、この一点もそれに値しょう。


御子柴大三

 
若いサーカス団員















東御市にお住まいの画家梅野亮さん宅を
訪問させて頂きました。








人生をサーカスに準える画家・高須賀優

御子柴大三



かって高須賀優(一九四五~)のブリキ小作品をある画廊から購入したことがある。それ故か昨年中半、御本人から「曲芸お伽草子」(ニ0十一年、鶴書院刊、この出版社は発刊当時、内神田にあった)なる冊子が送られてきた。巻頭には彼が尊敬するヘンリー・ミラーの言葉を文字って「好きなように描いて好きに死ね」の言葉が掲げられていたが頁を括るや否や驚嘆してしまった。鮮やかな色彩が飛び散るかのように画面狭しと躍動しているではないか!偶々画家本人とお会いする機会を得たのでこのことをお聞きしたら、この冊子に描かれている作品はかって一九七四に関根大サーカスを観るにおよび、また一九九七年にスイスの道化師・ディミトリーの演技に出会い深く魅了された経緯もあって、絵として表現するものが悉くサーカスとその周辺に集中するようになったという。作家にとり、表現したい対象があることは幸せなことである。

 彼の筆法は慎重に構想を練って描くタイプではなく即興芸、いうならばジャズの演奏に近いと言える。滾る心が筆に宿り瞬時の必然を求め画面をはみ出さんばかりの熱気に包まれている。描かれた曲芸師の肢体はエロスの中にタナトスが内在し乱舞する如きだが、抑えきれぬ荒ぶる精神そのものも垣間見えて共感したのである。

 彼の筆法は慎重に構想を練って描くタイプではなく即興芸、いうならばジャズの演奏に近いと言える。滾る心が筆に宿り瞬時の必然を求め画面をはみ出さんばかりの熱気に包まれている。描かれた曲芸師の肢体はエロスの中にタナトスが内在し乱舞する如きだが、抑えきれぬ荒ぶる精神そのものも垣間見えて共感したのである。

 もっとも彼は画家ではあるが自称イラストレーターでもあってその分野での業績は一九八九年、吉祥寺パルコで開催された彼の個展〈キチジョージ展〉で展示されたイラスト画が月刊誌「ユリイカ」(青土社、神田神保町)の編集者の眼に止まり、同年、「総特集 村上春樹の世界」の表紙絵(装幀画)となったことだろうか。

 因みにに発刊時の「ユリイカ」誌を拝見すると村上春樹さんも三六年前だから春樹青年なのは微笑ましいが、彼のイラスト画も吉祥寺という活気ある瀟洒な街角を描いて出色の出来映えと見えた。

 これ以後、澤野久雄さんの小説「高原の聖母」の挿絵を担当したことで一九九0年、文化学院画廊(神田駿河台)での個展開催となった。

 彼と、かっての「ユリイカ」誌のことを話題としていた時期に、別タイミングでフェイスブックに彼の新作が映し出され一目で驚嘆した。誰か名のある画家の作品ではないかと訝ったが間違いなく彼の作品である。この最近作「若いサーカス団員」を観ると「曲芸お伽草子」時代の作品と打って変わり演技を終えた道化師が一休息し、物思いに浸るさまが染み染みと描かれている。沈静した表情に哀感が漂うようだ。人生って、波乱万丈、喜びも哀しみも、この道化師そのものじゃないか、と共感を覚えたのである。

 ルオーやピカソ、三岸好太郎等、洋の東西を問わずサーカスや道化を描いた名作は数々あれど、この一点はそれらに勝るとも劣らないだろう。



お茶の水シェイクスピア ギャラリー 
「本の街」2025JULY  



2025-06-17

サーカスの家 髙須賀優展
 2025年6月6日〜16日 
銀座Gallery枝香庵Flat 
中央区銀座3-3-12銀座ビルディング7f 

サーカスに関わり始めて50年。 
私が自分に関わって80年にもなりました。
サーカスと家族、想いかえしてみるに私は生まれた時から 
小さなサーカス一座の小さなクラウンだったように思えてきます。
幼少期頭をふりふりしながら絵を描く姿は、
彼の悦に入った時のポーズだった。 









































































セイレーンのサーカス 2024
















記憶 2024



天を仰ぐ女 2024












「画廊散策の愉しみ 巡り会った作品、作家達」
御子柴大三 出版記念展
2025年2月1日〜10日 
銀座Gallery枝香庵Flat 
中央区銀座3-3-12銀座ビルディング7f 

アートプランナー御子柴大三氏により月刊ギャラリー紙上に掲載された「巡り会った作品、
作家達」が完結し、この度『画廊散策の愉しみ』としてギャラリーステーションより2025年1月刊行されました。



















































髙須賀優





























初代館長 梅野 隆





















2024-01-10

高須賀優展 現れる人物 旅のクラウン 2023.9.28〜10.7

 高須賀優展 現れる人物  旅のクラウン
2023.9.28〜10.7
神楽坂セッションハウス
無事終了しました。

多くの皆さまにお越し頂き大変嬉しく思っております。
もう少し絵を楽しむ勇気が出てきました。
またお会い出来る日を楽しみにしています。
ありがとう御座いました。

最後に企画して頂いた豊田紀雄氏には
大変お世話に成りました。
感謝申し上げます。















セッションハウス会場










たたずむ女 2023 紙 水彩






旅のサーカス女 2023 紙 水彩






この奇怪な王国の軽業師 2023 ブリキ戸 油絵 アクリル





自らの明かりを持てり 2023 鉄板 油絵 アクリル





心に落ちる人 2023 鉄板 油絵 アクリル


















2022-12-09

画集 Love Painting 自費出版しました。

『Masaru TAKASUKA Love Painting 』

2019年12月初旬に, 中国の武漢市で第1例目の感染者が報告されてから, 
わずか数カ月ほどの間に世界的なパンデミックが始まりました。
誰もが戦々恐々と家に立て籠もり静かに過ごすようになりました。
その頃私もとって付けたような読書や水彩画を描いて日々を過ごしていました。
私には、若い頃描いていた未発表の水彩画がありました。
この機会にそれらの作品を纏めてみようと思いました。
そして、2021年6月 『Love Painting』という画集を自費出版することが出来ました。


表紙 両面カラー  
マットコート220kg 
本文 カラー無線綴じ 148p・カラー  
ヴァンヌーボVGスノーホワイト130kg 
左綴じ サイズ(A4210×297mm) 

発 行………………2021年6月23日 初版発行
著 者………………高須賀優
発行所………………Cirque Masaru
デザイン・編集……高須賀優


あとがき より 

30代、友人が関わるサーカス団で美術の仕事を手伝った。
空中ブランコのスターが、仮拵えの飯場で急いで飯を食べていた。
食べ終わるや、片付けも早々に直ぐさま舞台の袖に消えた。
現実と虚構の行き交うサーカス小屋での数日を過ごすことが出来た。
サーカスをテーマにした絵が生まれた。 
4、50代の頃描いていた未発表の人物画がある。
あの頃の私は、折り合わない現実、或いは理不尽な記憶に幻惑されながらも、
紙面に現れる人物画と対峙し会話していた。
ついには描きかけの人物画を抹消してしまう夜もあった。
そうすることで精神の平静を保っていたような気がする。
私にとって人物画を描くという事は、
野心だけではなくお呪いのような行為でもあった。
心の奥底にしまい込んでいた己の正体が描かせたものかも知れない……。
 50代になり、好きなように描いてみようと思った。
線が動き、跳ね、色彩が踊った。
それに一喜一憂し、自己分析でもするかのように己に問いかけた。
それらを纏めて、2011年に『曲芸お伽草子』(鶴書院)として小さな画集を出版した。
本画集にも数点再録した。
 夜な夜な現れる生霊との会話と格闘、
そして『曲芸お伽草子』で喜びと反抗と愛の精神分析療法を
自身に施す結果になった。 
2021年コロナ禍、画集『Love painting』を
出版出来ることを嬉しく思います。  
描ける喜びを楽しみたい。  

2021年3月 


 












●購入ご希望の方は下記のアドレスにてお申し込み下さい。
折り返しご連絡申し上げます。(国内のみ)



本体税込み3500円+送料400円=3900円

masarucircus@gmail.com


(2022.12.10)

2022-09-24

妄視の先のリアル展 2022年7月16日〜31日

妄視の先のリアル展

 7月31日をもって無事終了しました。
 暑い夏、コロナで大変な中地元の皆さま、 
また遠方から観に来て下さいました皆さま、 本当に有り難うございました。 
この様な展示を快諾し素晴らしい空間を演出して下さった、
 オーナーの友田修さんには心より感謝申し上げます。
 心に強く刻まれた作品展となりました。 
そして、会期中何時も来て頂いた 谷川晃一さん、 
有難うございました。












月光浴 2015
(月光浴の上に『YOU ARE お前だよ』を上描き。この作品は現存しない)




YOU ARE お前だよ2018



『存在する限りそれでもあなたは美しいのだから』2022










「3.11」2021

2011年夏、義父の実家のあった宮城県亘理郡山元町山寺に行った。

屋敷林に囲まれ、どっしりと佇んでいたはずの家屋がない。

遠くまで見通せる風景のなかに呆然と佇んで、暫く過去の記憶を辿った。

残された数個の玉石らしき物を見つけた。

展示のナンバープレートはそのとき見つけた物です。





井の頭縁起絵折り本(箱入り7㍍)


下:中学生頃の高田渡氏 
上右:友人の山崎邦広氏
(写真提供)



むかし住んでいた家の近くに、フォーク歌手の高田渡さんが住んでいました。
地方公演の無い日は井の頭公園や近所を、
サラという名の白い犬とよく散歩する姿を見かけました。
散歩の途中たまに僕の家に立ち寄ることもありました。
説得力のある渋い声の渡さんの歌は優しく、聞く人の心にしみ込んで来ます。
なかでも「あきらめ節」を歌う渡さんは好きでした。
今頃になって歌の気持ちが分かるような気がします。
明治・大正期に活躍した添田唖蝉坊と言う演歌師が歌っていたそうです。
北海道の公演先で渡さんは突然倒れ亡くなられました。
数ヶ月後、僕は小さなスケッチブックを持って井の頭公園に通い始めました。
1年半も通った頃、小さなスケッチブックは7冊を数えるようになりました。
この絵で絵巻物を作ることにしました。
出来上がった絵巻きは21×2100㎝にもなりました。
今回はその絵巻物をリメークした折本「井の頭縁起絵折本 INOGASHIRA ENGIEORIHON」2022 
〈6.5×8㎝ 蛇腹経本折り、54山(7面×19継ぎ)、
箱入り:桐 トメ 新印籠蓋 べた底〉と、21mの原絵巻「井の頭縁起絵巻 
INOGASHIRA ENGIEMAKI」2007〈21×2100㎝〉を展示しました。




ディミトリの涙 2022(Dimitri)


Dimitri

1935年9月18日、スイス南部のティチーノ州アスコーナに生まれました。
父は彫刻家・建築家のヤーコブ・ミュラー、母は手織り職人・工芸家で名はマーヤ。
早期に道化師になることを決め、
ベルン近郊のツォリコーフェンで陶工の職業訓練修了後、
マルセル・マルソーらのもとで道化師として訓練を受けました。
ディミトリさんの言葉です。
笑いがなくても生きていけるかもしれないが、人生は楽しくないだろう。
私にとってユーモアと愛は一体だから。
たとえそれが惨くブラックなユーモアであったとしても』
『私のパフォーマンスは政治的ではない。
ただ、個人的にそういった問題を見て見ぬふりをすることができないだけだ。
難民の境遇を考えると同情を覚える。
アントワーヌ・ド・サン・テグジュペリも言ったように、
「肝心なことは心でしかよく見えない」のだ。
この言葉は私にとって人生の指標だ』
1997年9月の群馬県サーカス資料館落成式にも来郡され、
童謡ふるさと館で「家族の肖像」など素晴らしい
クラウン舞台演目を披露されました。
2016年7月19日、80歳で亡くなりました。

参考:SWI swissinfo.chより




スイランの画家 2021





中央:谷川晃一氏
右: 平井勝正氏
左: 高須賀優


     (2022.9.22)